先のことはわかりませんね。
電話は実家の兄からで、長姉のお姑さんが亡くなったとのこと。
86歳だったそうだ。
そのあとポストから届いたばかりの年賀状を取ってきた。
めくっていくと、筆で手書きされた長姉の年賀状の最後の1行にこんなひと言が。
先のことはわかりませんね。
ほんとにそうですね、お姉様。
ところで、さっき夫が部屋の隅に誰かいたよ、と言う。
「着物着た人が座ってて、立ってすぐにどっかにいっちゃったけど。」
「どんな着物?」
「薄い色の花柄で、帯が紫っぽいの。」
「姉のお姑さんが挨拶に来てくれたんじゃないの? 律儀な人だったから。」
「でもおばーさんじゃなかったよ。」
「霊だから、若いころに戻ったんじゃないの?」
もうお会いしたのは何十年も前になってしまうけれど、俳句が好きで、おしゃれなお姑さんだった。
嫁として一緒に暮らしていた姉はときどきは愚痴り、次男の嫁の私に、
「同居していない人に、同居の苦労はわからないわよ。」
などと言ったりもしていたので、決して波風なかったわけではないと思うが、それも含めて一人の人が亡くなったことの厳粛さと尊さが心に染みる。
ご心配なこと、心残りなこともあるでしょう。
でも、残ったものたちは大丈夫です。
安心して天国に行って下さいね。
合掌