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Frosty Night(逝くなら霜夜に!)

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この地球に生まれてきた訳は、確かな信念を持つために、制約された条件の中でひとつのことに邁進し、思いを具現化させるため

というわけで、母との不毛な戦いを停戦しようと思う

というわけで、母との不毛な戦いを停戦しようと思う_c0007384_172124.jpg天童荒太さんの『包帯クラブ』を読んであれこれ考えていたら、思い出したことがある。
小学校低学年のころだったと思うが、ミカンを切ろうとして、包丁で左のひとさし指を切ってしまったことがあったのだ。
結構ザックリと切ってしまい、血がポタポタと流れた。
田舎の広い家の中には私一人で、少し離れたところにある牛舎で母が仕事をしていた。

私は一人で救急箱を出してきて、傷の手当をしようとした。
傷口を押さえながら、なんとか空いている指で治療をしようとしたが、血は全然止まらずに、ポタポタと指から流れ落ちる。
プラスチック製の救急箱は、蓋の部分の真ん中が凹んで成型されていて、そこをつまんで蓋を外す形状だった。
その凹みの部分に、私の血がどんどん溜まってゆく。
私は不安でたまらなくなり、泣きながら大声で母を呼んだ。

外は激しい雨。
たぶん、私の声は母には届かなかったはずだ。
でも、母がなにかの拍子に家に戻ってきて、救急箱の前で泣きじゃくっている私を救ってくれた。
その後どうなったか覚えていないが、母の治療で血も止まり、病院にも行かず、そのうち自然に治ったのだろう。

あの切り傷は、身体を切った切り傷だから、母も気づいて、早急な手当てをしてくれた。
だから手当てが遅れてばい菌が入って傷が化膿してグチャグチャになって、手を切断しなければならないような事態にはならずに済んだのだ。

それに比べて、心の傷は見えない。
そして同じ負荷がかかっても、大丈夫な人もいれば、簡単に傷ついてしまう人もいる。
同じ人間でも、前は傷ついてしまったことが大丈夫になったり、逆に、前はなんとも思わなかったことが、あるきっかけで傷つくようになってしまったりってこともあるだろう。

『包帯クラブ』の中に次のようなくだりがある。

「名前がつけられたんだよ、シオ。
 気持ちが沈むようなこと、納得いかないこと、やりきれないって、もやもやしたこと。
 あの気持ちに、包帯を巻くことで、名前がつけられたんだよ<傷>だって。
 傷を受けたら痛いしさ、だれでもへこむの、当たり前だよ。
 でも、傷だからさ、手当てをしたら、いつか治っていくんじゃない」


そもそも、身体の傷だって傷が痛んでいるわけではなくて、痛みを感じているのは脳だ。
『失恋の痛みは骨折の痛みと同程度』という研究発表も前に新聞で読んだことがあったな。
だから心の傷の痛みも身体の傷の痛みと同じ『痛み』として、受け止めるのが自然なんだろう。
自然に受け止めて、流れる血を止める手当てをして、そしてしばらくそっとしておけば、傷は治る。

心が痛む初期のときに必要なのは、『学校カウンセラー』でも『権威ある精神科医』でもなくて、
「チチンプイプイ、痛いの痛いの飛んでいけ!」
って、根拠のないまじないでもいいから、一緒にその傷を共有してくれる人なんだろう。
子供は些細なことで傷つくけど治癒力も高いから、そのくらいの手当てがあればきっと毎日笑って生きていけるんだよ。

リストカットする若い人が多いってことは、この間も書いた。
そういう人は、心が痛くて痛くて、でもそれを誰にもわかってもらえないから、わかりやすい傷を作って、誰か(自分の心の痛みをずっと見ないふりしてきた自分も含めて)に気づいてほしいのかな?
もちろん、理由はひとつじゃないと思うけど。

若い人と言えば、テレビ見てたら細木○子が高校生相手に、「自分を大事にしろ」だの「食べ物は大事。魂(字幕ではこの字じゃない漢字を使っていた)を作るの」だの、「お母さんは、四六時中家にいるべき」だの、もっともらしいことをブッこいていた。
もっともらしいことなのに、なんでこの人の言葉は気持ち悪いんだろう?
100人の高校生の中に一人きれいな女の子がいて、
「でも、女の人が働いて、男の人が家事をやってもいいんじゃないですか?」
って、勇気を奮って言ったら、否定はしないけどそんなもん絶対不幸になる!みたいな言い方をして脅すし。。。。
そんなに自分の言い分を通してもらわないと不安なのだろうか?

細木○子は、私たちの親の世代の代弁者なのだと思う。
だから大っきらい!
うちの母なんかも都合のいいところだけ引っ張ってきて「親は大事にするべき」とかいう言葉に、我が意を得たり!みたいな顔をする。
私が知りたいのは、「正しいのはどの生き方か?」ではなくて、「どうしたら自分を大事にする生き方ができるのか?」ってことだ。

あんたたちは、身体から流れる血を止める手当は教えてくれたけど、心から流れる血を止める手当の方法は教えてくれなかった。
もっともそれも仕方なかったのだって、私はもうわかっている。
だって、知らなかったんでしょう?
生まれた頃から「お国のために死ね」って言われて育ったあなたたちの傷は、相当深いはずなのに、その傷を手当てしてくれる人はいなかった。
だから、「それでも爆弾で死んだ人より幸せ」だと思い込んで、がむしゃらに生きてくるしかなかったんでしょう?

もうやめよう。
見ていて痛々しいんだよ。
あなたは本当は傷だらけで、傷の上から傷が出来て、それが膿んで、グチャグチャになってんだよ。
それでも正しいって言い続けるから、若い子たちが混乱する。
あなたの代わりに心の傷で死ぬこともあるんだって、実証してしまう。

戦いをやめて、お互いの傷に包帯を巻こう。
私から停戦をするから。

というわけで、『母と仲良くしたいけど』のカテゴリは、この辺で一区切りにしたいと思う。
「母と仲良くしたいけどできないよ」というのは、つまり「私のやり方が正しいのに母に伝わらない」ってことだから、結局、私の方も戦いを仕掛けているのと一緒な気がして、負けた気がする。
変なところで、負けず嫌い。

なんか書きたいことがあっちこっちに飛んで、まとまりのない記事になってしまった。
その分、つっこみどころ満載なので、コメントお待ちしております。
by linket | 2007-09-25 17:13 | ●母と仲良くしたいけど

この地球に生まれてきた訳は、確かな信念を持つために、制約された条件の中でひとつのことに邁進し、思いを具現化させるため


by hami