今日は父の命日
まだ学校が週休二日制ではなく、その日曜日をはさんで、金・土・月・火が高校の期末テストだった。
家から高校が遠いため下宿生活をしてした私は、普通なら週末は家に帰るのだが、その週末はテスト勉強のために下宿に残っていた。
携帯電話などない時代。
部屋にいた私に、下宿屋のおばあさんが、お兄さんから電話がきているよ、と呼びにきた。
電話に出ると、「お父さんが危ないから、早く帰ってこい」と兄。
急いで家に帰る仕度をしている間に、もう一度兄から電話がきて、父が死んだことを知らされた。
54歳違いの父は、71歳だった。
ものごころついたときから、父は体の弱いおじいさんで入退院を繰り返してたから、父が死んだのは仕方のないことだと思っていた。
あれから20年以上が経って、ああ、父は早世だったのだと思い知る。
今日が命日。
でも墓参りはしない。
だってお墓になんか、父はいない気がするし。
父が生きていたことの名残を、御影石に置き換えないと忘れてしまう人だけが墓参りにいけばいいのだ。
私はいつだって父のことを思い出し、父のために祈って、父に助けられているような気でいるから、わざわざ墓参りに行って、
「お父さん、会いにきましたよ」
なんて、そらぞらしくて言う気にならないから。